ここに来るとなぜか懐かしいような、いつかの誰かとの思い出がよみがえって来そうな、切なくて不思議な気持ちになるんです。フルカラーで見ているはずなのに、どこかセピア色にすら感じてしまう。この建物が重ねてきた歴史が、そこからにじみ出る表情が、わたしたちをちょっとノスタルジックにさせます。
　

港町、早川。国道135号線を挟んで向かいに港の見える場所に立つ築年不詳の古民家です。長らくみかん農家さんが使われていた住宅で、おそらく大正時代からあるだろうと言われています。建具の美しい玄関、昔ながらの土間の台所、陽当りの良い廊下…建築当初の面影は今もしっかり残っていて、まだまだ活かせそうな部分がとても多いんです。古いけどなんだかすごくいきいきしているというか、あたしゃまだまだ現役だよ！って笑うしゃっきりしたおばあちゃんみたいな印象。
古民家暮らしに憧れる方なら使いづらい部分を補修して暮らしてもいいし（寒さ対策は必須！）、お店としてリノベーションしたらみんなに愛されるすてきな場になる予感がしませんか。広い土間や倉庫を活かして、住居兼工房として使うにもいいかもしれません。
　

実は何箇所か増築されているようで、上記の中二階の和室と、下記の東側の棟は後から建てられた建物でちょっと趣が違います。母屋はお店、東側の2Fを住居部分と使い分けるにも良さそうです。
　




どうでしょう、どこか“帰ってきた”ような安心感がありませんか。セピア色のこの空間を大切にしてくださる方にぜひ引き継いでもらいたいです。
築100年前後とかなり古いので、あちこち補修は必要で工事費用もそれなりにかかってくると思います。それでもこの建物だからこそできることがきっとあると思うのです。
ここがどんなふうに生まれ変わるのか、わたしたちも楽しみでなりません。あなたがここでしたいこと、叶えたいこと、ぜひ聞かせてください。

［文・寺田］

▼もうちょっと新しめの古民家もあります。

小道の先に、静かな古民家